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近年、南京大虐殺についての研究は、資料整理及び史料研究の方面において、大きな成果をあげた。また、7月3日には、南京大虐殺史と国際平和研究院2019年学術委員会会議、並びに『日本侵華南京大虐殺研究』創刊一周年シンポジウムが行われた。大学、研究機構、人事資料部門の学者40名が会議に出席し、この研究の今後の展望や注意点について検討し、以下のような提案が出された。

 

新しい視野と方法を探索する

南京大虐殺研究は、半世紀を超えている。南京大虐殺史と国際平和研究院の張憲文院長は、「南京大虐殺に関する実証研究、ミクロ的研究、平和学研究、学際的研究が望まれている。南京大虐殺事件に限らず、例えば、細菌戦などの暴行も研究項目として取り上げ、また、東アジアの視点から、研究の視野を広げる必要がある。」と主張した。

 

南京大学歴史学院の張生院長は、「半世紀以来の研究の蓄積のおかげで、南京大虐殺研究は、資料を集める段階を超え、新しい視野と方法で研究する段階に入った。現在、学際研究によって多くの成果を挙げたが、大虐殺の歴史を巡っては、概念生産、範疇区分とその内包を充実させる面において、哲学、文学、社会学などの多方面の学科から大いに研究する必要がある。そして、南京大虐殺研究は、歴史学の研究を踏まえ、学際的視野から、全面的な知的生産、理論的で哲学的な思考が必要である。」と意見を述べた。

 

中国社会科学院近代史研究所の王建朗所長は、「南京大虐殺研究の実証研究に力を注ぎ、南京大虐殺の史実をさらに整理する必要がある。そして、学際的視点から研究を切り拓くのである。」と述べた。

 

中国人民大学国際関係学院の王継添教授は、「新しい資料の発掘と総合利用は、南京大虐殺の実証研究を推進する上で基本となる。一方、学際的研究は、知的な創造を実現する方法の一つとして、歴史と理論の結び付きに役立つ。」と述べた。

 

研究しながら平和理論の構築を考える

今後、南京大虐殺研究は、実証研究と学際的研究を強調する以外に、平和学研究、ミクロ的歴史研究及び南京大虐殺の研究成果の伝播にも関心を持つべきである。

 

中国第二歴史档案館の馬振犢館長は、「新時代の南京大虐殺研究は、まだ深める余地がたくさんある。例えば、南京大虐殺史の細部研究や平和学視点からの大虐殺事件の比較や大虐殺事件資料の国際的宣伝と史実の普及などである。」とコメントした。

 

北京大学歴史学部の蔵運祜教授は、「南京大虐殺が歴史上の事件であるからこそ、これに関する研究は、科学的な方法により、反戦研究、平和学研究に結び付ける必要がある。そうすれば、世界的に共鳴を起こすことができるのである。」と指摘した。

 

中国社会科学院近代史研究所の高士華研究員は、「それは南京大虐殺研究の成果を世界に広める効果に関わっている。」と指摘し、「中国の抗日戦争は、第二次世界大戦、また世界反ファシズム戦争の一部でもあるから、中国の声を世界に発信すべきである。」と述べた。

 

江蘇省社会科学院歴史研究所の王衛星研究員は、「基本的な史実を整理し、虚無主義的歴史観を避ける必要がある。南京大虐殺史が国際社会で受け入れられるよう、国際的視野で平和の理念を構築する。」との意見を述べた。

 

それに関係する研究を更新する

近年、反戦史、日本侵華史と中日関係史の研究は、研究者の規模が大きくなり、資料の蓄積も多くなったため、よい成果を挙げている。しかし、改善する余地はまだある。中国社会科学院近代史研究所の卞修跃編集員は、「学術史の整理と概念の分析が必要である。未来に向かって、南京大虐殺史あるいは日本侵華史の研究に更新の問題がある。新しい資料の発掘、研究者の育成、テーマの更新以外に、観念上の問題、理論と方法論、研究の視点と視野、判断の依拠などにおいても、創造が待たれている。」と述べた。

 

南京大学中華民国史研究センターの李玉教授は、「歴史学の研究者は、歴史を証にするだけではなく、歴史を鑑にし、研究成果を充分に生かすためにも、歴史学の研究論文は、多方面の特質と機能を持つべきである。研究成果をよりよく世界に発信するために、思想性を重んじると同時に、科学性、芸術性も重視すべきである。」と述べている。

 

なお、今回の会議は、侵華日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館が主催し、南京大虐殺史と国際平和研究院、『日本侵華南京大虐殺研究』雑誌社、南京侵華日本軍南京大虐殺史研究会の協賛により実施された。

  

作者:呉楠

初出:中国社会科学網-中国社会科学報

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